追悼会。

沢山の人はいらなかった。
本当に破壊王を好きだった人達で送りだしたかった。

実感も無いままに。

7時過ぎからぽつらぽつら人が集まり始める。
店の扉には「橋本真也追悼会」の紙も貼り出し。

カウンターの中には入りたく無かった。
思いを共有したかったから。

外にはバーベキューコンロに火を灯し、海鮮物を焼き、酒を飲みながらみんなでハッスルを見た。
いつもと変わらないハッスルに皆んな笑いながら楽しむ。
知らないで来てしまったプロレスファンでは無い常連さんも、面白いと一緒に鑑賞。

いつもと変わらないハッスルだった。
追悼セレモニーが始まるまでは・・・。


遺影を抱きリングインした小川直也大谷晋二郎川田利明
掲げられた遺影に、初めて破壊王逝去の実感が沸き出す。

本当はこの時点でダメだった。

追悼の10カウント。
涙を流す晋二郎。
天国の破壊王に小川からメッセージ。
政治的に闘わさせられながら、共鳴し、破壊、そして創造を共にしてきた戦友へのメッセージ。

福岡の会場、そして僕等も合わせ、弔いのトルネードハッスル。
鳴り響く爆勝宣言・・・。

こらえ切れず嗚咽しながら涙を流す。

初めて受け入れた破壊王の死というものに、胸が張り裂けそうで一杯だった。



何となく好きだったプロレス。
その後タイガーマスクブームになり、僕達の世代の男子は、みんなプロレスが好きだった。
デビューで変なマスクで現れたタイガーマスクより、何か殺気立ってたアントニオ猪木の方が好きだった。

維新軍、ニューリーダー、そしてUWFが現れるようになった時。
その時から少しづつファンだった人も、新日本プロレスから離れて行った。

ターザン山本に乗っかり、色々な目でプロレスを見る事を知り、人生とプロレス的な生き方を投影しだし、気がつくとプロレス村の住人となっていた。

猪木の教え通り、KING OF SPORTS新日本プロレスこそが最強だと信じた。
中途半端な不良少年は、体格的なものから「自分自身が最強ではない」事を知っていた。「185cmくらいあれば、最強を目指したかった」とも思っていた。
力で人を抑えつけるという概念も、嫌いではなかった。

しかし自分より強いやつなんてゴロゴロいる事を知り、「喧嘩だけでのしあがる?無理無理。」と思うようになった頃。それでも「誰が最強か?」という事には興味深々で、「猪木かな?前田かな?」とやはりプロレス村から思い巡らせていた時、等身大から序々に強くなり、頭角を現してきたのが橋本真也だった。

僕は橋本真也という大きな背中に乗っかり、勝利すると拍手を浴びせ、負けると落ち込み、這い上がる度に何度も感動を共有し、段々と知った彼の強烈な豪快さや可愛さ、繊細さやダメっぷり。
そんな橋本真也を、ずっと愛してやまなかったのです。

小川直也という存在を知り、新日本プロレスが最強では無いという事を思いしり、アングルだのブックだの、ガチだの総合格闘技だのと色んな事を知りつつも、いつだって純粋に勝って欲しい。そうずっと思わせてくれたのは、長いプロレス村人生の中でも、破壊王。その人だけだったのかも知れません。

せめてもう一度だけでも、本当に強い「破壊王橋本真也」を見たかったです。



そんな思いを馳せ、日記を書きながらまた涙を流しているのですが。

紙のプロレスの携帯サイト、「紙プロHand」にて、男色ディーノの「橋本真也と少年」というコラムがアップ済みです。
抜粋するのは嫌なので、加入していない破壊王ファンの方は是非とも加入してでも読んでみて下さい。
それだけでも315円の値打ちはあると思います。
出来れば一人でいる時に。

素敵な文章で、また僕から涙を奪ってしまいました。




真夜中、残った皆んなでバーベキューコンロの炎を囲いながら、肌寒い中外で酒を飲みました。
橋本真也追悼会の張り紙も、感慨深く燃やしました。

やっと受け入れられた現実。
本当に、もう帰っては来ないんですね。

有名人、タレント、スポーツ選手。
この先身近じゃないどんな人が逝去なされても、こんなに感傷的な涙は流さないと思います。

ありがとう破壊王
この先、僕の人生で「ヒーローは?」と聞かれたら、迷わず「橋本真也」と答えます。
そして着メロという物が出来てからずっと変わらなかった爆勝宣言は、ずっと僕の携帯から鳴り止む事は無いでしょう。

こんな長文、最後まで読んで下さった皆さん。どうもありがとうございます。

さよなら破壊王